ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

姿勢別・職業別 ③営業

2017年6月26日

こんにちは、理学療法士の法貴です。

久々の姿勢別・職業別ランニング障害シリーズ第3回、今回は営業職を取り上げてみたいと思います。



営業職でなりやすい姿勢とは?

営業というと普段から外回りなどで歩くことが多いと思います。

1日の中での移動距離が他の部署の人よりも長くなり、その分足も強くなっていることが考えられます。

そう考えるとマラソンなどの競技には向いている職種のような気もしてきます。

ただしここで細かく姿勢をみていくと、いくら運動をしていてもその人の癖が歩行や姿勢に出てきます。

そのままの姿勢で歩くことで特定の場所にストレスが集中することは十分考えられます。

例えば、重い荷物を持って長時間移動する方の場合、体に左右の傾きが生じやすくなります。

ビジネスパーソンのカバンの中身をみてみると、ノートパソコン、ペットボトルなど計3kg~6kgほどの荷物を常に持ち歩いている方が多いようです。

この重量がどこにかかるかにもよりますが、片方の肩が上がる、または骨盤が片方に寄る、といったことが起きる場合があります。

例えば、右手に荷物を持った状態が長く続くと、荷物の重みを支えるために肩に力が入り、かつ背骨は伸びる姿勢になりやすいです。

右に倒れない様に上半身を反対に倒す場合(①)や、腰をねじることでバランスを保つ場合(②)などがあります。


どのパターンを選択するかは、元々のからだの使い慣れたほう(筋力があるorない、柔軟性があるorない、など)になります。

どういうことでしょうか。

②の腰をねじる場合でみてみましょう。

写真では右手に荷物を持ち、骨盤は少し左を向くようにして体をねじっています。

このときの右手と腰の位置関係をみてください。右手は腰よりも後ろにきています。

右の腰は頭部・肩・足の位置からみてもやや前方にきているのがわかるかと思います。

このような位置関係になると腕の筋力だけではなく、股関節の前についている靱帯などで、荷物の重さを分散させて支えることができます。

仮に、骨盤が本来の位置、肩の真下あたりにきていると自然と体幹(腹筋・背筋)の筋力を使うことになります。

言い換えると、②のような姿勢をとることで、体幹が弱くてもうまく負荷を逃がしながら荷物を持ち運ぶことができます。

一時的にこういった姿勢をとること自体は問題とならないことがほとんどですが、それが日常的に続く営業職の方などは、仕事中以外の姿勢にも影響してくることが考えられます。

重い荷物を持ったときなど、脳が負荷を感じ取ると、体は自然と楽なほうに姿勢を調節するようになっています。

営業職に起こりやすいランニング障害

こういった普段のからだの使い方、姿勢は無意識に選択しているもので、外見にはわずかな違い(少しだけ肩が下がっている、など)であることがほとんどです。

なので、本人を含め周りの人も気づかないことが多いのではないでしょうか。

そして気づかない間に立っている姿勢が変わり、立っている姿勢が変わることで、歩き方も変わってくる。

歩き方が変わるとランニングフォームにも変化が出てくることがあります。

例として①や②の姿勢で走った場合はどこにストレスがかかりやすいか考えてみましょう。

①は上半身が左に倒れ、骨盤は右に移動しています。

右の太もも外側の組織が伸ばされ、負荷が集中しやすい状態といえます。

このまま長距離を走ることでランナーがなりやすい腸脛靱帯炎(膝外側の痛み)などを右膝に引き起こすリスクがあります。

②では骨盤が左方向、半時計回りにひねられているので、右膝が内側に入る形に近くなります。

右膝内側の靱帯・腱が支える負荷が大きくなり、支えきれなくなると鵞足炎(膝内側の痛み)が生じることがあります。

また先ほど触れたように、②は腹筋の力が抜けてしまっていて、代わりに右股関節の前の靱帯・筋肉で体を支える姿勢になっています。

大腿直筋や腸腰筋といった股関節前方の筋肉が十分に鍛えられていないと、鼠径部痛(足の付け根の痛み)なども生じやすいかもしれません。

自分の姿勢を知ろう

これらはあくまでも可能性・リスクですが、自分の姿勢を知っておくことは障害予防のために大切なことです。

きちんと姿勢を把握しておくことで、どこを鍛えれば良いか、どこをストレッチしたほうが良いか、もある程度予想がついてきます。

皆さんも鏡の前に立ってどちらか一方に傾きやねじれがあるか、見てみてはいかがでしょうか。

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