ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

特発性側弯症について(子供とスポーツ②)

2018年6月11日

こんにちは!
6月になり関東も梅雨入りしました。

だんだんと雨模様の日も多くなってきて、ランナーの皆さんにとっては外で走ることが出来ず歯がゆい日もありますね。

「雨なんか気にしない!」という強気のランナーもたくさんいらっしゃると思います。

雨を見て「今日は練習いいか」とすぐ妥協してしまう自分は見習わなきゃと思っています(笑)。

さて今回は前回からの続き、「子供とスポーツ」の後編です。



前回は運動器検診について紹介しましたが、今回は検診で見つかることも多い「特発性側弯症」に焦点を絞って、子供のスポーツ障害との関連を考えていきたいと思います。

特発性側弯症とは

側弯症は背骨が何らかの理由で横に弯曲した状態を言います。

原因によって機能的脊柱側弯症か構築性脊柱側弯症に分かれます。

子供に多い特発性側弯症は構築性脊柱側弯症に分類されます。

標準整形外科学によると「構築性脊柱側弯の多くは成長期に発見され、成長期間中に進行する可能性がある。

(中略)構築性脊柱側弯は様々な原因で発生するが、大多数は原因不明の特発性側弯症である。」とされています*1。

側弯症→機能的脊柱側弯症:左右の足の長さの違い、腰痛などの痛みを避けるため、etc

   →構築性脊柱側弯症:特発性側弯症、神経筋性側弯症、etc

運動器検診でも行われる側弯のチェック項目としては

①肩の高さに左右差はないか
②左右どちらかの肩甲骨が浮き出ていないか
③ウエストラインの左右非対称性はないか
④前屈させたときに肋骨の高さに左右差がないか

をみます。

これらの項目が一定の数値を超えるときに側弯症として、専門整形外科医の二次検診にまわることになります。

側弯症の治療

治療は装具療法が第1選択で、側弯の程度が強い場合には手術適応となることがあります。

例えば、成長期で側弯が20°~25°以下の軽い側弯の場合は経過観察となります。

進行しないこともあるため定期的な診察を受けながら状態をチェックしていきます。

神奈川県藤沢市で行われた27年間の検診の結果をまとめた報告*2では、一次検診陽性率が小学生4.74%、中学生8.24%、二次検診が小学生0.22%、中学生0.74%だったとのことです。

二次検診で陽性とされないながらも、一次検診で引っかかる子供達も多いと言えます。

特発性側弯症は原因不明なので予防は難しいです。

ただし側弯は成長に伴い進行していくので、早期に発見して対応ができれば生活への制限を最小限にすることができます。

早期に側弯症を発見して整形外科医によるフォローを受けることがとても重要になります。

スポーツと背中のねじれ・傾き

また、スポーツという点から考えると、検診で特発性側弯症と診断されなくても脊柱の弯曲や体の左右のズレがある子供は多く、こういった子供達が運動をしていく際に適切なカラダの使い方を知っておくことはケガの予防において大切です。

例えば片方の肩が下がっている(検診で引っかからない程度に)姿勢の中学生がいたとします。

要因は利き手や足の柔軟性など様々で、それ自体は問題とならないことが大半です。

ただ、この中学生が陸上部で長距離を頻繁に走っていたとするとどうでしょうか。

日本臨床・スポーツ医学会では一日の走行距離を中学生では5~10km程度(月間200km)にとどめることが望ましいと提言しています*3。

走行距離が長くなるほどランニング障害を起こす確率が上がると言われており、オーバーユースによる障害を防ぐためにこれを守ることは必要だと思います。

ただし、あくまでもこれは「一般的に」定めた数値なので、姿勢に左右差がありランニングフォームが崩れている場合には、これより走行距離が短い場合でもケガをしてしまうリスクは出てきます。

中学生は男女ともに成長期で骨・筋肉ともに成長が著しい時期なので、カラダの成長に合わせた運動ができていないと、フォームの崩れは生じやすいと言えます。

右肩が下がっている場合、骨盤はやや左に移動します。

右の脇腹が縮こまったかたちになるので、ランニングで右足をついたときに衝撃吸収を十分に行えないこともあります。そうすると膝まわりや足首などに負荷が集中します。

試しにその姿勢で走ってみてみましょう。

1回走るくらいでは問題はなく、大半の人の場合「走りづらいな」という程度でしょう。

これが積み重なってくるときに初めて痛みや筋肉の張りが足に出てきます。

下の写真のように右の脇腹が縮むことで、重心の位置が下がります。

そこから蹴りだそうとすると、より大きな力が必要になるので負担がかかりやすくなり効率的なフォームとはいえなくなります。



これを修正するための運動として、簡単なものにリーチ運動があります。

高めのイスやベッドなどで右手を側方に伸ばしていきます。

手は水平に、頭は垂直に、それぞれ維持しながら左のお尻を少し持ち上げるようにしましょう。

すると右の脇腹の筋肉が伸びた位置で働くので、体幹の安定性向上に効果があります。



このように、子供のスポーツ障害では姿勢が大きな意味を持ちます。

まだカラダを支える筋肉も発達途上のため、影響が出やすいのだと思います。

皆さんもスポーツをしていて痛みが出ているお子さんが身近にいらっしゃるときは、姿勢に変わったところはないかチェックしてみてください。

まつだ整形外科クリニック、理学療法士の法貴がお届けしました!

参考文献
1;標準整形外科学 第9版、医学書院、2005
2;檜山ら、藤沢市における脊柱側弯症学校検診27年間の結果、臨床整形外科45(3)、2010
3;骨・関節のランニング障害に対しての提言、日本臨床スポーツ医学会誌13、2005

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