ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

足のつき方

2017年6月12日

こんにちは、理学療法士の法貴です。

ランニング障害は接地時の衝撃吸収をいかに上手く行なうかが1つ重要なポイントになります。

今回は接地時、つまり足をつく瞬間に焦点を当ててケガとの関係をみてみます。

ピッチ走法とストライド走法

足のつき方は個人差があります。

足のつき方は個人差があります。

以前ブログでも取り上げたピッチ走法とストライド走法で考えてみましょう。

ピッチ走法は歩幅を小さくするので、足の前半分を多く使い、後ろ半分が地面に接している時間が少なくなります。

ストライド走法では歩幅が長くなる分、足全体を使う傾向になります(踵をつくかつかないかはストライド走法の中でも人によって違います)。

ストライド走法は初心者ランナーが行なうと筋肉などを痛めやすいと言われることは前回話しました。

より細かく動作をみていくとその理由、特徴がわかります。

ストライド走法の様に、足の後ろ半分をより多く使って足をつくと、その瞬間に膝は伸びやすくなります。

膝が伸びた状態で足をつくと地面から跳ね返ってくる力が膝関節や股関節、上半身まで伝わります。

ピッチ走法だと足の前半分を多く使うため膝は自然と曲がり、接地時の衝撃吸収を行なうようになります。

筋力が少なくてもこのバネを上手く使うことで、地面からの力を逃がすことができます。



足のつき方と走り方への影響

足をつくときに後ろ半分を多く使うタイプをRearfoot strike、前半分のタイプをForefoot strikeと呼ぶことがあります。

ここで、このRear(後ろ)かFore(前)の違いがどのように走り方に影響を及ぼすのか、より細かく考えてみましょう。

肥田らはランニング動作を解析した研究を2016年に理学療法科学に発表しています。

この中では、Rearfoot strikeとForefoot strikeの違いを三次元動作解析装置(体に目印をつけて床反力や体の動きを細かく計測する機械)を使って細かく調べています。

その解析結果から、ランニング動作の特徴について以下のように述べられています。

「Rearfoot strikeでは大きな衝撃を利用し、(中略)、立脚期に大きく前方に進む」

「Forefoot strikeでは衝撃を少なくし、(中略)、立脚後半において蹴り出す力を大きくすることで、遊脚期に大きく前方に進む」

専門用語が出てきてしまい少しわかりづらいかと思うのでかみ砕いて説明します。

ここで出てくる立脚期は簡単に言うと足がついている時、遊脚期は足が浮いている時になります。

つまり、Rearfoot strikeでは踵から地面をつかむように前に進み、 forefoot strikeでは足を振る力を使って跳ねるように前に進む、という違いがあるようです。

足のつき方とケガの関係

では実際、このような足のつき方の違いはランニング障害による痛みにどの程度影響するのでしょうか。

これに関する興味深い研究が2012年にMedicine and Science in Sports and Exercise誌に掲載されました。

この論文では、Daoudらが大学生ランナー52人の足のつき方とケガの関係を調べた結果を次のように述べています。

「約74%のランナーが中等度から重度の故障を経験していた。Rearfoot strikeで足をつく傾向があるランナーは、Forefoot strikeのランナーより約2倍の割合で、繰り返されるストレスによる故障を経験していた。外傷性の故障は統計的に有意な差はみられなかった。」

ここでの「繰り返されるストレスによる故障」とは簡単に言うと腸脛靱帯炎などに代表されるオーバーユースによるケガ、「外傷性の故障」は捻挫など足を捻ったりして瞬間的に生じるケガのことになります。

足の前半分でつくタイプの方が体への負荷が少なく、オーバーユースによるケガは起こしにくかった、ということになります。

こういった結果を踏まえてみると、足の前半分をより多く使うForefoot strikeの方が、慣性力や足のバネを利用して走るのでケガをしにくい、といったことが考えられると思います。

ただし気をつける必要があるのは、走り方だけを急に変えることは危険、ということです。

いくつかの報告では、Rearfoot strikeから意識的にForefoot strikeに走り方を変更したランナーは第2中足骨疲労骨折(足の裏の骨です)やシンスプリント(すねの痛み)の発生リスクが高まる、といったことも言われています。

現在のところ、スポーツ医学界ではどちらが足のつき方として良い・悪いは結論が出ていない、ということになりそうです。

おわりに

これらの研究でわかったのはあくまでも割合です。

足の後ろ半分でつくタイプであっても、それに見合った筋力が足についていればケガはしないでしょうし、骨盤や股関節をうまく使うことで接地の際の衝撃吸収は十分にできるでしょう。

ただ、こういったデータは自分の足が痛む原因についてのヒントになるのではないでしょうか。

体をしっかり作りながら、自分にあった走り方、フォームを追求していきましょう!

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