ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

下腿部のランニング障害 アキレス腱炎、周囲炎、滑液包炎

2013年11月11日

こんにちは!

ランニング障害SOSサイト運営している市民ランナー整形外科医の松田です!

今年は異常気象となる日が多いですね。
季節外れの猛暑や記録的に多い台風の発生など。

そんな中、久しぶりに好天の続いた連休でしたね♪

今回は<下腿部のランニング障害>について説明します!

脛骨過労性骨膜炎(シンスプリント)

ランナーの下腿部痛の多くはこの脛骨過労性骨膜炎です。脛骨内側の中央部からやや遠位に痛みを生じます。

発生メカニズム

下腿には脛骨とその外側に腓骨という2本の骨があります。

このうち脛骨には後脛骨筋が付着しており、ランニング動作によって繰り返し収縮されます。

この後脛骨筋が収縮するときに、骨とのつなぎ目である骨膜を強く引っ張ることで、骨膜が炎症を起こしてしまうのです。

多くは走りすぎによる過度の負荷ですが、路面の硬さやシューズのクッション性、ストレッチ不足、筋力不足など多くの要因が考えられます。

治療方法

1) 安静
痛みが強い場合は安静とし、アイシングを行います。

ただし、痛みが少ない程度であれば症状の悪化しない程度での軽い練習は行っても良いでしょう。

2) ストレッチ
足関節の内外反に影響を受けるので、これを制御する前脛骨筋や長短腓骨筋などを強化すると良いでしょう。

もちろん、下腿三頭筋のストレッチは大切です。

また、最近はエクセントリック・トレーニングが推奨されています。これはアキレス腱炎でも行われている治療です。

3) インソール
クッションの高いシューズに変えるのも一つの対策です。また、足部の回内外を制御するようなシューズ選びも選択肢です。

とにかく無理しないことと、再発予防のストレッチが大切です練習後のアイシングも忘れずに行いましょう。

アキレス腱炎(周囲炎、付着部炎、滑液包炎)

病態

アキレス腱炎は踵骨付着部より2~5cm近位の脆弱で血管分布が乏しい部位に起こります。

形態学的には、微小な断裂と修復が繰り返された不完全な修復像であり、そこが力学的にも弱点となり応力が集中してしまうのです。

一方、アキレス腱周囲炎は腱の周囲にあるパラテノンが炎症を起こして肥厚し、アキレス腱および下腿筋膜と癒着を起こします。

付着部の障害では、アキレス腱付着の繊維軟骨の骨化や腱繊維の前方成分に断裂を生じたりします。

また、アキレス腱と踵骨の間に存在する後踵骨滑液包が炎症を起こし、滑液包の肥厚増殖や退行性変性などを生じる後踵骨滑液包炎があります。」

発生メカニズム

アキレス腱内側の繊維は、ヒラメ筋と連続性があり膝屈曲での回内が影響していると考えられます。

一方、外側は腓腹筋から連続する繊維であり、膝伸展で負荷が増大します。

この負荷は、足部回外から回内に伴う踵骨の変化の影響を受けています。

つまりは、ランニング動作での接地期の回内外の安定性が低いケースが問題になると言えますね。

治療方法

アキレス腱炎や周囲炎はかなり難治性で治療に難渋することが少なくありません。

1) 相対的安静
痛みに応じて安静度を決定しますが、決して無理してはいけません。

2) 抗炎症剤
非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)は腱炎にはあまり効果がないことが多いようです。

また、ストロイドの局所注射で鎮痛効果は期待できますが、腱自体の脆弱化を引き起こしたり、脂肪組織の壊死を起こすリスクがあるので慎重にすべきでしょう。

3) ヒアルロン酸の注射
アキレス腱周囲炎では、パラテノンと腱の間に注入したり、後踵骨滑液包炎では滑液包に注入することで症状の緩和が期待できます。

4) インソールの改善
踵骨の内外反の影響を減じることができます。

5) 運動療法
エクセントリック・トレーニング腱の変性部位に対する生物学的修復を促すために、過度な伸張刺激を加える方法です。

最近、膝伸展位のみで足関節の背屈をフロアーレベルで止める手技が報告されて、良好な成績がでています。

6) 手術療法
長期にわたる治療でも改善されない場合に行われます。基本的には、パラテノンと変性部の切除を行いますが、時に、正常部分が細い場合は腱の移植を行う場合もあります。

いずれも手術療法では復帰まで最低半年以上要しますのでじっくりと焦らずに治療していく気持ちが必要になってきます。

過労性骨膜炎とアキレス腱炎 周囲炎のまとめ

✔過度の繰り返される負荷が原因です。
✔治療は長期に及ぶこともあり、練習方法の見直しも必要です。
✔再発予防のストラッチ、筋力トレーニングが大切です。

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