運動検診 (子供とスポーツ①)
2018年5月28日
こんにちは!
埼玉県熊谷市にあるまつだ整形外科クリニック、理学療法士の法貴です。
5月はアメフトの問題が連日ニュースで報道されていましたね。
選手と監督・コーチの関係性から大学スポーツのあり方まで多くを考えさせられる出来事でした。
さてブログの本題ですが今回は大学生ではなく、さらに年齢の小さい子供とスポーツの関係を、2回に渡ってみてみたいと思います。
前編は「運動器検診」です。
子供とランニング障害
子供でランニング障害というとあまりイメージが結びつかない方もいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし整形外科のクリニックで働いていると、走っていて膝や足首を痛める小学生・中学生をみることがよくあります。
高校生になり部活動・クラブでの練習が厳しくなり、競技中のプレーも激しくなってくるとケガをするリスクも上がってきます。
大事なことはケガをしてからの「アフターケア」とケガをする前の「予防」です。
今回は「予防」の観点から子供のランニング障害を考えてみます。
最近は小学生頃からスポーツを始めている子供が多いように思います。
サッカーやスイミング、空手なども習い事として人気があるようですね。
普段から運動をしているから安心かというと、必ずしもそういうわけではありません。
走ったりジャンプをしたりといった動作で痛みが出るなど、急な体の成長に動きが追いつかず体に無理がくることもあります。
原因としては運動のしすぎ(頻度や負荷)、誤ったフォームなどが挙げられます。
一方であまり運動をしない子供も増えていると言われます。
携帯ゲーム機が普及したことなどで、外で遊ぶ時間が減り体を使う機会が減っていることもあるようです。
確かに最近は公園でも遊具で遊ばずゲームをしている子供をみることもあります。
こういった子供達は骨や筋肉の成長に遅れが出たり、神経と筋の協調性(コーディネーション)が不十分だったりすることがあります。
このように、子供達の間で「頻繁に運動をする子供」と「慢性的な運動不足の子供」の両方のパターンがあり、それぞれが骨・軟骨や関節などに問題をきたす場合があるということです。
運動器検診とは?
これらを解消するための方法として「運動器検診」が学校で始まっています。
学校での検診というと身長・体重、視力、歯科などがまず思い浮かびますね。
これらに加えて、平成28年から学校検診の中に体の柔軟性、バランス、痛みなどの身体機能チェックを行う運動器検診が組み込まれることになりました。
子供の運動器検診を10年以上前から調査・準備していた「運動器の健康・日本協会」のホームページで、検診が始まった経緯をみることができます*1。
それによると、「運動不足による体力・運動能力の低下や運動のしすぎによるスポーツ障害の二極化した問題が深刻化」しており、「これまでの調査研究から、何らかの運動器疾患・障害を有する子供たちが1~2割いることが推定」されているとのことです。
これらの結果から学校での運動検診の必要性が高まり、モデル事業を経て全国的に実施されるようになったようです。
運動器検診では肋骨や背骨の変形があるか、腕や足の各関節の可動性などをみます。
実際にバンザイをしたりしゃがみ込みをしたりして動きに左右差がないか、痛みがないかなどをチェックしていきます。
必要な児童には医療機関の受診を促し、精密検査を受けてもらう(二次検診)という流れになっています。
二次検診までいかないまでも、筋肉や関節の柔軟性不足から来ると思われる特徴がある子供は多く見つかりました。
例えば「踵をつけたまましゃがみ込みが出来ない」子供は全体の2.3%に該当した*2とのことです。
「踵をつけたまましゃがめるか」は足関節と股関節の硬さを現わしています。
足関節・股関節を深く曲げられず重心が後方に引けてしまうと足の裏全体をつけたまましゃがむのは困難で後ろに倒れてしまいます。
こういった足関節や股関節の硬さはランニング動作にどのように影響してくるでしょうか。
足首が十分に反らないときや股関節の曲がりが不足していると、上半身を前方に移動させるのがスムーズでなくなり、ランニングの際にももの前の筋肉に頼る形になり、筋肉を硬くしてしまいます。
筋肉の硬さは効率的なランニングフォームを崩し、疲れやすさや場合によっては膝に痛みを生じさせる(オスグッド・シュラッター病など)こともあります。
こういった細かい動作や姿勢のチェックから問題点を早期発見してケガの予防を行うことが何より大切です。
特に子供の頃のスポーツは成長期が重なりその後の運動器の機能に大きな影響を及ぼします。
運動器検診が始まったことで、多くの子供・親御さんに子供の体について興味・関心を持ってもらうことが出来ているのではないでしょうか。
さて、検診後の整形外科専門医の二次検診の結果で最も多かった診断は、特発性脊柱側弯症だった*2ようです。
次回は子供に生じやすい特発性側弯症とランニング障害の関係について、疾患の特徴を踏まえて考えてみたいと思います。
次回もお楽しみに!
*1:運動器の健康・日本ホームページ www.bjd-jp.org/indx.html
*2:徳村光昭ら、学校健康診断における運動器検診(2016年度実施案)―整形外科を専門としない学校医による実施方法―、慶応保健研究33(1)、2015
最新の記事


