ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

カーブ、地面の傾斜

2017年8月7日

熊谷市のまつだ整形外科クリニック 理学療法士の法貴です。

今回は少し視点を変えて、走る「地面」について障害予防の観点から考えてみたいと思います。



みなさんはマラソンの練習はいつもどういった所でしていますか?

しっかりとしたトラックを走っている方も、そうでないアスファルトや砂利の上を走っている方もいるかと思います。

普段トラックや専用コースで練習している方は、地面からの反発力が少なくケガをしにくいかもしれません。

ただし大会に出るのであれば最低限、地面の素材や形状に慣れておく必要もあるかと思います。

より本番に近い環境を想定した練習を取り入れることで、ケガを未然に防ぐことができるかもしれません。

では、地面の形状・特徴はどのようにランナーの体に影響を及ぼすのか、考えていきましょう。

床面の素材や特徴

トラックや専用のコースでは、床面の素材としてゴムチップなどが埋め込まれていて、接地時の衝撃を和らげてくれているところもありますね。

各地で開催されているマラソン大会は、大抵の場合、公道のアスファルトの上を長距離走ることになります。

トラックとは違いアスファルトは硬く、足をついたときの衝撃が大きくなります。

その分、衝撃吸収をするためにより多くの筋力が必要になり、関節にかかる負担も大きくなる傾向にあります。

また、市街地の道だと場所によっては緩やかな傾斜がついていることもあります。

一般的な道路は水はけをよくするために道の中央に向かって緩やかな傾斜がついていることが多いです。

なので、走っているときに集団の外側にいて道の端に近い場合など、足は地面の傾斜に合わせてわずかですが傾斜したまま走ることになります。

似たような環境としては、カーブがあります。

カーブがきつい場所(折り返し地点など)を走るときは、体にカーブの外側に向かって遠心力が働きます。

そのため、遠心力に負けないようにするため、カーブの内側の方に自然と体を傾けていると思います。

足首や体全体を片方に傾けることで上半身がぶれないように調整しているといえます。

ただし、傾けた状態が長く続くと負担が特定の部位に集中してしまい、痛みが出てくることもあります。

床面の傾斜とストレス



写真をみて考えてみましょう。

この写真の場合、右足の外側、左足の内側がそれぞれ低くなっています。

足首は外側の方が構造的に痛めやすいと言われます。

少し細かい話になってしまいますが、骨の構造からみてみるとわかりやすいでしょう。

内くるぶし・外くるぶしの高さを見てみてください。

外くるぶしの方がわずかに低くなっている人が多いと思います。

足の裏が外を向くように捻ろうとするとかかとの骨が外くるぶし(腓骨というふくらはぎ外側の骨です)に当たるため止まります。

反対に、足の裏が内を向くように捻ったときは、内くるぶしの高さは少し高いので骨で止まりません。

もちろん関節を安定させるため靱帯がついていますが、内側に捻ったときには構造的に大きく捻ってしまうため、足首外側の靱帯は強く引っ張られることになります。

靱帯が引っ張られ損傷することで痛みが出ます。

(足首を痛めるとき、こうした理由から痛みの部位は明らかに外側が多くなります。)

では再び写真に戻ってみてみます。

右足の外側が低く、足首を内に捻る形に近いので、右の足首は外側に不安定な状態であると考えられます。

足首の安定性を保つために筋肉が働いてこの位置を保っています。

この場合は右足の腓骨筋(すねの外側)や大腿筋膜張筋(ももの外側)の働きが強くなっています。

この姿勢のまま走り続けることで筋肉が疲労し、負荷に耐えきれなくなると足首や膝の外側に痛みが生じることがあります。

また、写真のように地面が右に傾斜している場合、右足に体重を乗せすぎると外側に倒れてしまうため、無意識に上半身を左側に少し倒していることもあります。

このとき骨盤は右に移動していて、腰の筋肉(脊柱起立筋群、腰方形筋など)にも常に力が入った状態になります。

筋・筋膜性腰痛など、腰の痛みにつながってくるリスクがあります。

うまく対応するためには

ここまでみてきたように、少し地面に傾斜がつくだけでもランナーの足腰には普段とは違った負担がかかってくることになります。

基本的には傾斜が極力少ないところを走った方がいいので、あまり道の端は走らず、真ん中付近を走ることをオススメします。

集団で走っているときや日陰などの関係で端を走りたいときにはあまり長時間にならないようにした方がいいと思います。

折り返し地点などカーブの強い箇所では体幹の崩れを最小限にするようにした方が、エネルギーロスが少なく済むと思います。

といっても、練習中は道路の真ん中を走ることもなかなかできないと思うので、少し足元に気をつけて、走る「地面」に意識を向けてみてはいかがでしょうか。

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