ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

痛みについて(基本編)

2017年8月21日

まだまだ暑い日が続きますね。

ランナーの皆さんにはなかなか厳しい気候ですが、自分も走るたびに暑さとの闘いに四苦八苦しています。

こんにちは、熊谷市のまつだ整形外科クリニック 理学療法士の法貴です。

今回は「痛み」について、「基本編」と「応用編」で2回に分けて、深く掘り下げていってみたいと思います。



そもそもこのランニングSOSというブログがランニング障害についてのものなので、当然今までにたくさん取り上げてきているテーマです。

ランニング障害として出てくるものには腸脛靱帯炎、足底筋膜炎などが有名です。

膝や足、股関節の周りが痛くなることが多いですが、腰や肩、場合によっては首のあたりが痛くなるような方もいます。

そもそも「痛み」とはどのようなものなのでしょうか?

最近は研究が進みメカニズムが少しずつわかり始めています。

また、痛みに対しての対処法も新たな視点が出てきているようです。

今回は「基本編」です。痛みのメカニズム、対処法についての基本をみてみましょう。

痛みのメカニズム

ランニング障害では靱帯や筋肉、骨(正確には骨の周りの膜など)にストレスが生じることが原因になります。

それが刺激として受容器で受け取られることで末梢神経が刺激され、中枢神経である脊髄を通って脳まで達し、そこで初めて「痛み」として認識されます。

捻挫などストレスが生じ、損傷した部位には炎症が生じ、発痛物質と呼ばれる化学物質が作られます。

発痛物質は痛み刺激を受け取る受容器の反応を強める作用があり、それがとどまることで痛みは持続することになります。

急性と慢性

痛みが生じるメカニズムをみてみると、痛みを「急性」と「慢性」に分けて考えることができます。

簡単に言うとある部位にストレスが生じて症状が出てきてすぐの時期を急性、時間が経過してきてからの時期のことを慢性といいます。

急性の痛みは1回の瞬間に強く、大きな力が特定の部位に集中することで組織が耐えきれずに損傷して生じます。

しかし、小さな力でも同じ部位に何回も繰り返し加わると痛みが生じます。
これは慢性的な痛みになります。

走っていて足を捻る、つまづいて膝をすりむくなどすると、瞬間的に傷・患部に痛みが強く出ますよね。

軽いものであれば2~3日で治ってしまい、その後は同じように走っても痛くなくなると思います。これらは「急性の痛み(急性外傷による)が出て、その後治った」ということになります。

一方、走っていてだんだんと足首の内側が痛くなってきた場合はどうでしょうか。瞬間的な痛みほど強くなくてもそのまま走り続けることでそれが積み重なり、痛みは強くなってきます。

立ち止まってしまえば痛みは減り、また走ると痛みがじわじわ出てきます。

数日間休んで一回「治ったな」と思っても、同じ走り方で同じようにストレスが加わると、再び痛みは出てきます。これは慢性的な痛みといえます。



対処の方法

①急性の痛み

急性外傷は腫れを引かせることが最重要です。腫れが長引かないように、早めの応急処置が必要な時期になります。有名なものにRICE処置があります。

Rest(安静):患部を動かさずに休める
Icing(冷却):氷などで患部を冷やす
Compression(圧迫):包帯などで圧迫する
Elevation(挙上):患部を高い位置に置く

の頭文字をとったもので、この4つを早期に行うことが急性期の炎症への対処の基本とされています。

アイシングは保冷剤などをタオルで巻いて当てるようにし、10分~15分ほど冷やすのを何回か繰り返し行ってください。

エレベーションは常に行うことは難しいと思いますが、例えば足のケガの場合は寝るときにクッションの上に足をのせる、といった工夫は効果的です。

動いているときは循環が比較的保たれていますが、睡眠中など安静にしている時に心臓より低い位置に患部があると、炎症が邪魔して血液が心臓に戻っていきません。

RICE処置を行うことで急性期に生じている炎症を早く引かせ、痛みを軽減させる効果があります。

また、この4つにProtection(保護)を足してPRICEとすることもありますが、ランナーのケガの場合は出血や骨折などは少ないのでPは特別必要ない場合が多いと思います。

②慢性の痛み

ランニング障害における慢性痛は小さな負荷が関節や筋肉、靱帯に繰り返しかかることで生じるので、一番重要なことは小さな負荷がどこから生じているかを見極めることが大切になります。

それを探るには自分だけでは難しいこともありますが、ビデオでフォームをチェックしたり、関節を動かしたりすることで予想をつけることはできます。

予想がついたら硬いところをほぐしたり、弱いところを鍛えてみましょう。

その後のランニングで痛みがどのように変化するかをみて、予想が当たっていたかどうかを判断することができます。

急性期の痛みとは違い個人差も大きいので一概には言えませんが、その分原因がわかれば、その部分を改善することで痛みが取れるだけではなくパフォーマンス自体が上がってくる可能性も大きいです。

急性・慢性、いずれの痛みの場合も、たとえ小さなものだとしても、放っておくと重大なケガにつながってしまうこともあります。

異変に気づいたら信頼のおける整形外科で一度診てもらうことをオススメします。

今回は痛みの基礎編ですのでこれくらいにしておいて、次回の応用編でより深くみていきましょう。

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