ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

姿勢別・職業別 ④力仕事

2017年7月10日

こんにちは、理学療法士の法貴です。

今回は姿勢別・職業別ランニング障害の第4回になります。

今回は「力仕事」をしている方の特徴を考えていってみます。


「力仕事」というととても大ざっぱな分け方ですね。

力仕事と聞いてまずイメージするのは、工事現場・工場で働く方、大工さんや土木作業員の皆さんでしょうか。

一般的に、重い荷物を担いだり、長時間立ったりしゃがんだりといった動作を繰り返すことが多いのではないかと思います。

インナー筋とアウター筋

このように負荷の高い動作を行なうとき、体はより大きなパワーを必要とします。

パワーを生み出すのは筋肉です。

最近はインナー筋、アウター筋といった言葉も聞く機会が多くなりましたが、より大きなパワーを出すのはアウター筋の方が得意です。

おそらく、力仕事に従事する方はアウターの筋肉を普段から頻繁に使っており、より発達しているのではないしょうか。

人体には全身でおよそ220個の筋肉があるといわれています。

これら220の筋肉は形や大きさなどいろいろな方法で分類することができます。

ここで筋肉をインナーとアウターで分けて考えてみると筋肉の機能が少しみえてきます。

ざっくり言うと、体の表面に近いところにある筋肉をアウター、深いところにある筋肉をインナーといいます。

筋肉は基本的には両端が骨にくっついていますが、アウター筋は関節から少し離れたところにくっついています。

そのため関節に対してテコの原理が働き、骨を引っ張る際に大きなパワーを生み出すことができます。
一方、インナー筋は関節の近くについているので関節を安定させる作用がより大きく、運動の軸がぶれないようにする役割があります。

どちらが強ければいいという訳ではなく、両者のバランスが整うことで効率良く動くことができると言われています。

インナー、アウターというと体幹の筋肉、腹筋・背筋などを思い浮かべる方も多いかと思いますが、インナー筋・アウター筋のバランスは体幹以外の場所でも重要になります。

例えば股関節でみると、表面にあるアウター筋は大腿直筋、大殿筋、中殿筋などがあります。

太ももの骨である大腿骨を前後左右に動かすときに主に使われます。

一方、深層にあるインナー筋は小殿筋や梨状筋などの小さな筋肉になります。

股関節のインナー筋はひとつひとつの大きさは小さく、パワーが少ないですが小殿筋や梨状筋の他にも数が多くあります。

主に股関節を安定させる作用が大きく、可動性が大きい股関節(可動性が大きいということはその分不安定とも言い換えられます)がずれないように支え、効率良くアウター筋の力が伝わるように働いています。

そのため、ピンポイントにこういった小さなインナー筋を鍛えることも、ランニングを行なう際には有効です。

特に走った後などに足の付け根、股関節の前方が痛みやすい人などはインナー筋を鍛えてみるのも1つの手だと思います。

体幹の筋に戻ってみましょう。

力仕事を多く行なう方はアウターの背筋が強化されていて、普段から腰が反っている方も多いように感じます。

重いものを持ち上げる際には強い背筋の収縮が必要なので、背筋を繰り返し使っていることで背筋と腹筋のバランスが崩れ、腰が反ってくる方がいるのかもしれません。

腰の反りが強いと骨盤が起きて後ろに引けやすくなります。

シリーズ第1回に取り上げたデスクワークの姿勢とは対象的といえます。

アウターの背筋で腰を固定したまま走ると、足の後ろ側、ハムストリングスが張ってきます。

十分なストレッチなどを行なわずに急に走ると筋肉痛が生じやすく、ひどいと肉離れが生じることもあります。

この場合、姿勢からの影響が大きいので、ハムストリングスのストレッチだけではなく、腰・背中のストレッチを行うことで足へのストレスが軽減されると考えられます。

また筋トレとしては腹筋、特にインナー筋の腹横筋などを鍛えることも肉離れの予防のひとつになるでしょう。
仕事柄、力仕事が多く、腰を反った姿勢になりやすい方はチェックしてみてください。

普段の姿勢や体の使い方が、体の硬いところ、弱いところを決める要因になってきます。

普段の生活とスポーツは別、と考える方が多いと思いますが、ランニングでケガをしやすいランナーの方は少し参考にしてみてはいかがでしょうか。

最新の記事