股関節部のランニング障害
2013年11月9日
こんにちは!
ランニング障害SOSサイト運営している市民ランナー整形外科医の松田です!
Fun Runをモットーにしています(^^
自宅から小学校まで徒歩10分ほどですが、今日は地区の運動会が行われています。
書斎の窓を開けるとアナウンスが聞こえてきます♪
今回は<股関節のランニング障害>について解説します。
股関節の特徴
股関節は関節の周囲が大きな筋肉に覆われており、受け皿となる臼蓋(きゅうがい)とそこにはまり込む骨頭とで形成されています。
深くはまり合っているので、基本的には安定性が高くランニングによる外傷は多くはありません。
しかし、最近になって股関節におけるランニング障害が注目されています。
代表的な股関節のランニング障害
1) 股関節臼蓋形成不全(きゅうがい けいせいふぜん)
生まれつき受け皿となる臼蓋が浅い状態をいいます。
股関節はおわんとボールの関係をイメージするとわかりやすいでしょう。
そのおわんのかぶりが浅く、適合性が悪いことがあります。
女性に多く、乳幼児期に先天性股関節脱臼や亜脱臼の治療歴がある人に多いのが特徴です。
X線で臼蓋と骨頭との適合性を確認します。
軽度の場合は股関節の外転筋を強化することによってある程度は改善されます。
ただし、重度の場合や痛みが強く持続する場合は手術が必要になるケースもありますので注意が必要です。
<ポイント>
女性ランナーで股関節の痛みが出てきた場合は、一度股関節のレントゲンをとって適合性を確認することが大切です。
2) 弾発股(だんぱつこ)
股関節を曲げ伸ばしする時に、引っ掛かりを感じて動きが止まるような感覚になります。
そして引っ掛かりが外れて再び動き出すような状態をいいます。
<原因>
大腿筋膜張筋の延長である腸脛靭帯が股関節外側にある大転子(だいてんし)に引っかかるために生じます。
ときに内側にある腸腰筋腱が原因になることもあります。
<ポイント>
骨盤が左右に大きくぶれるランニングフォームに人に多いようです。このケースはフォームの改善と大腿筋膜張筋のストレッチが有効です。
症状の改善が見込めない場合は、消炎鎮痛剤の内服・外用や、副腎皮質ステロイドの局所注射を行うこともあります。
3) 鼠径部痛症候群
<原因>
ランナーやサッカー選手に多く、内転筋の柔軟性低下と関係していると考えられています。
<症状>
鼠径管周囲、大腿近位の内側や前面、そして下腹部など局在が明瞭でない疼痛が特徴です。
多くは動作により疼痛が悪化し、特に股関節内転に伴う疼痛がみられます。
股関節の内転拘縮と外転筋力低下がベースにあるため、疼痛・拘縮・筋力低下という悪循環に陥ることが多いので注意が必要です。
<鑑別疾患>
恥骨や坐骨の疲労骨折や大腿骨頸部疲労骨折、腰椎椎間板ヘルニア、その他股関節疾患などとの鑑別が大切です。
X線やMRI検査が欠かせません。
<治療>
基本的に保存的治療を行います。安静による疼痛の改善はあまり期待できません。
そのため、消炎鎮痛剤などでコントロールしながら、股関節周囲のストレッチと筋力の獲得が必要になってきます。
内転筋拘縮と外転筋力の低下が関与しているために、内転筋拘縮の改善と股関節周囲の筋力(特に外転筋)が重要です。
4) 疲労骨折
股関節部の疲労骨折には大腿骨頸部骨折があります。
月間走行距離が長いシリアスランナーに多く、頸部での転位は手術が必要になります。
放置しないように診断を受けることが大切です。
また、他の疾患との鑑別を行うためにMRIが有用です。
<股関節部のランニング障害のまとめ>
✔女性ランナーでの股関節周囲の痛みは股関節の適合性が悪いことを
考慮すべし
✔引っ掛かり感がないか確認
✔診断に難渋するケースが少なくないため、MRIで鑑別が大切
—-あとがき—-
股関節周囲の痛みに対する診断は時に非常に難渋します(–;
エピソードと丹念な診察、そしてMRIが有用ですね。