ランナーズハイ
2017年3月6日
こんにちは、理学療法士の法貴です。
姿勢の話が続いたので、今回は少し違った角度からランニングについて考えてみたいと思います。
突然ですが、皆さんはどういうときに走っていて「気持ちいい!」と感じるでしょうか。
最近はスポーツの世界でもメンタル面はとても重要視されています。
心理的な変化について脳科学などでも研究が進み、科学的に少しづつ解明されてきているため、トレーニングに取り入れることが多くなってきているのではないかと思われます。
長距離を走ることはもちろんつらいことですが、つらい!を超えてある”ゾーン”に入ると、幸福感を感じることがあります。
これはいわゆる「ランナーズハイ」と呼ばれます。
ランナーズハイは長距離などを走った結果生じる多幸感のこととされています。
からだは追い詰められているはずなのに幸福を感じてしまうというのはどういうことなのでしょう?
普通、生物は自分の身に危険が迫っていると察知すると、サインを脳に出します。
そのサインが「痛み」などで、脳がそれを受け取ることで危険を避けるまたは最小限にするように行動します。
なので、長距離を走っているときに幸福感を感じてしまうのは、サインを受け取れずにからだを壊してしまうリスクがあるのではないでしょうか?
ランナーズハイはエンドルフィン仮説が有力です。
もともとは1985年にMorganが発表したエンドルフィン仮説が始まりで、近年も研究が進んでいます。
オピオイドとはモルヒネ様物質のことで脳内の神経で分泌される麻薬に良く似た成分のものです。
エンドルフィンはオピオイドの一種です。エンドルフィンが分泌されることで、筋肉や心臓など体中から発せられる「つらい」のサインがわからなくなり、つらいどころか幸福さえ感じてしまうのです。
ミュンヘン工科大学Henning Boecker教授らが2008年にCereb Cortex誌に発表した論文では、脳の活動をみることでエンドルフィン仮説を支持しました。
Boeckerらは10人のアスリートに協力してもらい、運動前の安静な状態とランニング後にPET(陽電子放出断層撮影法)で脳の血流の変化をみました。
これにより「持続的な運動後に内因性オピオイドが前頭辺縁領域で放出されることを生体で初めて証明した。
これはランナーの多幸感を感じ取ることと密接な関係がある。」と結論付けました。
ランナーズハイがおこるのはなぜか
それでは、なぜこのようなことが生じるか、ということになります。
このことについて、ナショナルジオグラフィック日本版(2012年5月)に興味深い記事が載っていました。
ハーバード大学Daniel Lieberman教授によると、「われわれの祖先にとって、狩猟や採集のために長距離を走ることが重要だったとしたら、その行動を導くフィードバックの仕組みがあったと考えていい。」とのこと。
つまり、長距離を走るのが「つらい」ものだと食料にありつけず生活に支障がでる。
そのため「気持ちいいからまた走ろう!」という気持ちになるために、人類の脳が進化した結果生まれた仕組みがランナーズハイだというのです。
とても面白いですね。
走った後の爽快感はこんなところからきているのかもしれません。
みなさんもケガの予防を心がけながら、楽しいランニングライフを送ってください!