ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

インナーマッスル 2 腸腰筋

2013年11月29日

こんにちは!ランニング障害SOSサイトを運営している
日本医師ジョガーズ連盟会員ランニングドクター
(整形外科医)の松田です!

さて、今回はインナーマッスルの中でも最も注目されている
「腸腰筋(ちょうようきん)」についてお話しします(^^

腸腰筋(ちょうようきん) iliopsoas muscle

腸腰筋という言葉は、1990年代の中頃から短距離走などの
瞬発系の選手や指導者の間で使われるようになってきました。

日本ではイチロー選手のトレーナーである小山裕史氏や1998年に
短距離走で日本記録を樹立した伊東浩司選手を指導した高野進氏の
影響も大きいようです。

●腸腰筋はどこにある?
では、腸腰筋はどこにあるのでしょうか。

腸腰筋とは、腸骨筋・大腰筋・小腰筋の3つの筋肉
成り立っています。

腸骨筋は骨盤の主要な骨である腸骨と大腿骨をつなぎ、
大腰筋は背骨と大腿骨をつないでいます。

これらを総称して腸腰筋と言います。

●腸腰筋の働き
腸腰筋は大腿を持ち上げ、股関節を屈曲させるうえで、
最も重要な働きをしています。

そのため、日常生活では姿勢を保持したり、
歩行や走行、階段昇降で重要な役割があります。

高齢者の転倒予防にも大切な筋肉です。

また、腸腰筋は股関節を屈曲させて、骨盤を前傾させます。

これは、背骨のアーチ(反り)を形成するために大きな役割を
果たしています。

この腸腰筋が弱ってしまうと、骨盤が後傾することになり、
猫背の姿勢になってしまいます。

この事からも、腸腰筋は骨盤の位置を安定させ、
正しい姿勢を保つうえで非常に重要な役割を担っているといえます。

●腸腰筋とランニングとの関係
腸腰筋の中の大腰筋は、脚を振り上げ、前に振り出すために
大切な役割を担う筋肉です。

つまり、ランニングの上で脚の支点になっているのです。

この支点である大腰筋を鍛えると、振り子である脚に勢いがでて
推進力がでるのです。

腸腰筋を鍛えることにより、身体が芯から安定するとともに、
推進力が増すためにランナーにとって大切な筋肉と言えるでしょう。

さらに、もう一点。

インナーマッスルはアウターマッスルと比較して疲れにくい筋肉
と言われています。

腸腰筋に限らず、インナーマッスルを鍛え身体の芯を
安定させることで、アウターマッスルを効率よく使うことが
出きます。

市民ランナーの多くは、アウターマッスルの大きな筋肉ばかり負荷を
かけすぎてしまうために、多くの酸素を消費してしまいます。

(私もそうです…)

その結果、速く疲労して後半にバテテしまうケースが多いようです。

後半の失速をなくすためにも腸腰筋をはじめインナーマッスルを
鍛えましょう!

●腸腰筋の鍛え方
腸腰筋をはじめ、インナーマッスルを鍛えるのは、
外から触れない筋肉であり、日頃意識できないために
なかなか実感できません。

そのために、まずは筋肉にスイッチを入れる事から始めましょう。

まず、日常生活の中で腸腰筋を使っているという
イメージを持ってみましょう。

階段昇降やもも上げ、そして仰向けになって脚をゆっくり
上げ下げするだけも腸腰筋は使われています。

その際、イメージしてみましょう。

簡単で代表的なストレッチ

脚の踏み込み体操

1.腰に手を当てて背筋を伸ばしましょう
2.息を吐きながら、前にゆっくり一歩踏み込み、腰を深く沈めましょう
3.ゆっくりと、自分に合った歩幅で行いましょう
4.踏み出した足を元に戻しましょう
5.反対の脚を踏み込みましょう
6.交互に行いましょう(10回づつ)

ストレッチのポイント

脚を踏み出したときに腸腰筋がストレッチされ、
後ろに蹴り戻すさいに筋力を鍛えられます。

脚を踏み出して腰を落としたときに、膝の位置は
つま先の真上にあるのが理想と言われています。

腸腰筋のまとめ

✔股関節を屈曲させて骨盤を前傾させる
ランニングのうえで脚の支点になり推進力を生み出す
アウターマッスルを効率よく使い、疲れにくくする

あとがき

黒人選手の走りをみていると、骨盤から下に大きな長い脚が出ているのがわかりますよね。これは腸腰筋が発達して、骨盤が前傾になり支点が高い位置にあるからだと思います。一方で日本選手の多くは支点が骨盤よりも低い位置(股関節あたり)にあるように思うのは私だけでしょうか?

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