ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

股関節唇損傷

2017年9月19日

こんにちは、熊谷市のまつだ整形外科クリニック 理学療法士の法貴です。

少し暑さも落ち着いてきて徐々に走りやすい時期になってきましたね。

今回は股関節の痛みについて、最近少しずつ聞かれるようになってきた「股関節唇損傷」について、ランニング障害との関連をみていきたいと思います。



股関節唇損傷というとここ数年、スポーツ選手や芸能人の方で手術をしたのがニュースになっているので、聞いて知っている方もいるかもしれません。

松田院長が書いたブログの中でも股関節の特徴について書かれていますが、ここでも少し復習してみましょう。

股関節唇の役割

股関節は大腿骨と骨盤で出来ていますが、元々関節が浅いので関節唇という繊維状の組織で補強されています。

これは肩関節も同様で、いろいろな方向に動く自由度が高い関節は、同時に脱臼するリスクも高いので関節唇が必要になるのです。

関節唇がつくことによって関節面積は3割程度増え、股関節を密閉することで関節内に陰圧を作り出すと言われています。

それにより股関節はより安定し、強い衝撃に対しても耐えられるようになっています。

この大事な役割を担っている股関節の関節唇ですが、骨の形態異常やスポーツなどの大きな衝撃が原因となって損傷を受けることがあります。

骨の形態異常としては、臼蓋形成不全FAIが代表的です。

臼蓋形成不全生まれつき股関節の骨盤側、ポケットが浅いことをいいます。

臼蓋形成不全があると、高い確率で関節唇損傷または軟骨損傷を合併していることが報告されています。

FAIは近年になって股関節の痛みに対して注目されてきている病態で、まだ聞き慣れない方も多いかもしれません。

そこで、次はFAIについて詳しくみていきましょう。

FAIとは

FAI(femoro-acetabular impingement)は直訳すると「大腿骨と臼蓋の衝突」となります。

本来は大腿骨と臼蓋(股関節の骨盤側のポケットのことです)はピッタリと合わさっているので、大きく動かしてもぶつかることはありません。

ただし何らかの理由で、骨の形が一部尖っていたり太くなっていることがあります。

そうすると大腿骨と臼蓋でぶつかってしまい、可動範囲が狭くなったり、痛みを生じます。

大腿骨側が太くなっているタイプ、臼蓋側が飛び出ているタイプ、大腿骨側・臼蓋側の両方に異常があるタイプ、の3つに分類されます。

手術療法

FAIに対しての治療はまず保存療法があり、運動や薬で痛みが治まらない場合などは手術を選択することもあります。

手術をする場合は骨形態異常の治療と、FAIによって損傷を受けた関節唇・軟骨の修復が行われます。

骨形態異常の治療は、尖ったところを削ったり一部を切除したりする手術です。

関節唇・軟骨の修復は、剥がれかけた関節唇を縫い合わせたり移植をしたりする方法があるようです。

保存療法(運動療法)

股関節の柔軟性を出すこと、股関節の適合を良くすることが必要になります。

例えば痛みのある部位と反対の部位が硬くなっていて大腿骨が押し出されることで、引っかかりが生じることもあります。

例えば股関節の外側が痛い場合に、内側を伸ばしたりほぐしたりすることで痛みが改善するのであれば、運動療法を行う必要があるかもしれません。

簡単なチェック方法

股関節の痛みは複雑です。痛みの部位や原因がはっきりしないことが多いです。

あくまでも基本はドクターに診てもらってレントゲンやMRIなどの画像を撮ることが大切です。ただ、簡単なチェックであればできるものもあります。

①股関節を動かしたときの引っかかり感
股関節唇損傷でもFAIでも股関節がスムーズに動かないことは同じです。

ドクターはFABERテストといって、仰向けの状態で痛みのある足をあぐらをかくような位置に持ってくるテストなどを行います。

自分だけの判断で無理に動かすことは危険ですが、痛みのない範囲で動かしてみて引っかかり感や痛みが特定の位置で出てくるかを知ることはひとつのヒントになるかもしれません。

②Cサイン
痛みのある部位を患者さんに聞いてみると、写真のように股関節を外側から前方にかけて覆う仕草をすることが多いようです。

これも①と同様、あくまでもヒントに過ぎませんが、FAIや関節唇損傷のある方に共通してみられるサインと言われています。



最後に

FAIや臼蓋形成不全は関節唇損傷を引き起こし、関節唇損傷を放置しておくと変形性股関節症につながることもあると言われています。

股関節唇損傷について一連の治療の流れをみてきましたが、個人の判断で原因を決めつけてしまうのは危険です。

股関節の痛みは股関節唇損傷以外にも様々な病態があるからです。

繰り返しになりますが、股関節に引っかかりや痛みがある場合は整形外科医に診察を受けて、状態をみてもらうことが大切です。

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