なぜケニアが速いのか
2018年3月5日
こんにちは!皆さんは「Breaking2」というプロジェクトをご存じでしょうか?
マラソンをやっている方は知っているかもしれませんね。
これはナイキ社が行った挑戦で、マラソンの42.195kmを2時間以内で走る、【Breaking2=2時間の壁を破る】という目的のプロジェクトです。
Braking2は2017年5月6日にイタリアのモンツァで行われ、トップランナーが記録達成のために集められました。
会場はF1サーキットで、大勢のペーサーが前を走り、給水のサポートも徹底して行われました。
最善の気象条件で行うために開催日や時間帯もナイキで設定したそうです。
その結果、2時間00分25秒という記録が生まれました。
ちなみに現在の男子マラソン世界記録は2時間02分57秒なので、あらゆる条件を整えた結果、2分以上も速い記録が出たということになります。
個人的にはあまりに整った環境を作り出して走ること自体マラソンの面白みをなくしてしまう気もしますが、ここではプロジェクトの賛否についてはおいておきましょう(笑)。
いずれにしても今後も世界記録は伸びていきそうです。
では記録を出すような選手に共通点はあるのでしょうか?
世界記録保持者のデニス・キメット選手とBreaking2で最速記録を出したエリウド・キプチョゲ選手。
2人の共通点として、どちらもケニア出身であるということが挙げられます。
なぜケニア人はこれほどに速く走れるのか?
今回はマラソンにおけるケニア人の強さについて考えてみましょう。
現代のスポーツは科学と密接につながっていて、膨大な科学的データに基づいたトレーニングが行われています。
ケニア人は以前から数々のトップランナーを生み出しているマラソン大国なので、しばしばケニア人ランナー自身も研究対象になっています。
フォアフットランニング
1つ目の違いはフォアフットランニングです。
ケニアやエチオピアでは小指付近のフォアフット(足底の前半分)での接地をしている選手が多いと言われています。
フォアフットでのランニングは短距離走でよく見られますが、それを維持するだけの筋力や安定性がないと長距離で使うのは難しいです。
フォアフットで走れる要因の1つとして幼少期から裸足で生活していることなどが考えられています。
ケニアなどアフリカでは舗装されていない道路がまだまだ多く、そこを裸足で走ろうとすると自然と柔軟性のあるフォアフットでの接地が身につき、足底の筋肉も発達するのでは、と言われています。
最近では日本人でも大迫傑選手(ナイキオレゴンプロジェクト所属)もフォアフットを取り入れて素晴らしい結果を残しています。
筋肉量
2つ目は骨格・筋肉量の違いです。
環太平洋大学の吉岡利貢准教授らは2012年にケニア人ランナーの体力・形態特性を調査した結果を体育学研究に発表しています。
吉岡准教授らはケニア人のNdambiri選手を対象にMRI(磁気共鳴画像装置)などを使って筋力などを日本人ランナーと比較しました。
その結果、Ndambiri選手は日本人ランナーより大腰筋の断面積が非常に大きいことがわかりました。
大腰筋の主な作用は股関節を曲げることですが、背骨と骨盤・大腿骨を連結する筋肉でもあり、姿勢の保持に重要な役割を持っています。
対象となったNdambiri選手に限らず、マラソンに強い東アフリカ諸国の選手は大腰筋が太く強いことが知られています。
ランニングエコノミー
最後はランニングエコノミーです。
ランニングエコノミーは経済性に優れた走りと訳されます。
出来るだけ省エネで走ることができるランナーはランニングエコノミーが高いと言えます。
エネルギー消費を測る指標としては酸素摂取量をみるのが一般的で、ある一定の走速度における酸素摂取量や、吸気の酸素量と呼気の二酸化炭素量を測定する方法などがあるようです。
筑波大学の榎本靖士准教授が2013年に出した論文では、ケニア人と日本人のランナーが同じスピードで走った場合、酸素摂取量はケニア人の方が少なくなったとしています。
つまりケニア人の方が少ない酸素で同じパフォーマンスを発揮出来るということになります。
これはケニア人のトレーニング方法が優れていた訳ではなく、生まれつきの能力の高さだと言われています。
デンマークのコペンハーゲン大学のLarsenらが2013年に少年期のケニア人とデンマーク人の体力を比較した結果、ケニア人の少年のランニングエコノミーの方が高かったそうです。
ここまでで挙げたのは1例です。
他にも足の長さ、身長なども平均値に差がありますし、陸上競技に対するメンタル、モチベーションも日本人とケニア人では違いがあるでしょう。
なので、ケニアの真似をすれば誰でも速く走れるかというと、当然そういうわけではない、ということになります。1つ目に挙げたフォアフットランニングも無理にフォームを変えてフォアフットしたことで足の指の疲労骨折を起こしたという例もあるようです。
怪我を予防するためにも、現在の自分の筋力、心肺能力に合った走り方をすることが大切です。ランニングエコノミーについては次回また詳しく取り上げてみたいと思います。
熊谷市のまつだ整形外科クリニック法貴がお送りしました!