ランナーのためのランニング障害SOS

まつだ整形外科クリニック

ランニングエコノミー

2018年4月16日

こんにちは、春も本番でだいぶ暖かくなってきましたね。

朝の冷え込みもなくなり早朝ランニングは楽になりました。

ただ、花粉症のランナーの方にとってはムズムズがツラい季節を迎えていることと思います。

今回のテーマはランニングエコノミーです。

以前のブログでケニア人の速さの秘密について取り上げましたが、今回はそこで出てきたランニングエコノミーについて、より深く掘り下げてみたいと思います。



ランニングエコノミーとは?

ランニングエコノミーは「経済的な走り」と直訳できます。

車で例えると燃費性能になり、燃費が上げられれば少ないエネルギーで長く走ることができるため、長距離走ではとても重要な要素といえます。

ランニングエコノミーの考え方は古くからあり、1974年にはDanielsがトレーニングによって運動時の酸素消費量は減り、効率的になることを発表しています。

できるだけ省エネで走ろう、というのがランニングエコノミーを考える際に重要になるのですが、では、省エネで走るコツ、テクニックはあるのでしょうか?

イギリスのカーディフ・メトロポリタン大学Isabel S.Mooreが文献のレビューをまとめた記事を2016年にSports Medicine誌に掲載しています。

自動車でみてみると、メーカー各社は車の燃費を上げるために、車体を軽くしたり、モーターを使ったりと様々な工夫をしています。

ランニングエコノミーも同じで、省エネな走りと一言に言ってもその内容は様々です。

ケニア人のランニングエコノミーが優れているということも言われていますが、そもそもの骨格、体のつくりが違うため、そういったところは「なるほど」と思いつつも自分たちにはマネできない領域になってしまいます。

ここではIsabel S.Mooreの調べた結果を参考に、トレーニング次第で変えられる部分を抜粋して考えてみましょう。

①歩幅

まずは歩幅をみてみましょう。

興味深いことに上級者のランナーはランニングエコノミーを下げることなく歩幅を微妙に変えているようです。

上級者ランナーはマラソンの後半で疲労してくると、ピッチを前半よりも約3%程度下げる(足を出すテンポをゆっくりにする)とのこと。

初心者ランナーではピッチが下がってくる幅は約8%と大きくなります。

疲労してくると誰でもピッチは下がりますが、上級者はこれをうまく調整して後半のスピードダウンを抑えているということになります。

②足の着き方

走るときの足の着き方はどうすればいいでしょうか?

足が地面に接している時間が長いということは衝撃吸収を十分に行うということになるので、そこからまた加速するのに高いエネルギーを消費します。

ただし接地時間が短すぎても今度はごく短い時間に跳ね返る力を作り出す必要が出てくるので、拮抗する筋肉を素早く切り替える必要があり、これはこれでエネルギー消費が高くなるとのことです。

大切なのは接地時間よりも接地した際にいかにスピードを殺さないで蹴りだすか、という質の問題になります。

足の前半分(フォアフット)でつくか、後ろ半分(リアフット)でつくかという点は練習で変えることができます。これは果たしてランニングエコノミーを改善させることができるのでしょうか?

高速ランナーを輩出し続ける東アフリカ諸国では、フォアフットの接地で走ることが子供の頃から身体に染み込んでいます。もともとフォアフットで走るランナーはリアフットに切り替えてもランニングエコノミーはあまり変わらないとの結果が出ています。

一方、もともとリアフットで走っているランナーがフォアフットに切り替えると、かえってランニングエコノミーは低下することが多いようです。

おそらく、フォアフットで長距離を走るには筋のバランスや体格などいろんな要素が必要になるため、やみくもに変えても身体に無理が生じてしまうのだと思います。

もともとフォアフットで長距離を走れるランナーは、走るスピードを遅くすれば自然とリアフットになるのでどちらも対応できるということです。うらやましい限りですね(笑)。

③靴

ランニングエコノミーが高いランナーは下肢(股関節から足の指まで全体)のスティフネスも高いと言われています。

スティフネスは体の硬さと訳せますが、スティフネスが高いと接地時にグニャっとつぶれずにバネのある蹴りだしができることになります。

そうすることで重心の上下動が少なくなり効率的な走りが可能になります。このスティフネスを変化させる要素として、文献では靴による影響が挙げられています。

衝撃吸収の機能が最小限の靴では下肢のスティフネスは上がります。

クッション性能が強い靴だとスティフネスは減少してしまうので、衝撃吸収には優れていますが蹴りだしはその分弱くなってランニングエコノミーを下げるということがあるようです。

ただし靴に関してはまだまだ意見が分かれています。

薄いクッションが良いのか、厚い方がいいのか。

それを履くランナーの身体の状態が違うので、結局はその人に合ったものということになりそうです。


いかがでしたでしょうか?

Isabel S.Mooreがまとめた記事ではこれ以外にも神経と筋肉の協調性や体幹の影響、関節の角度に至るまで様々なことについて書かれています。

世界中でいろいろな角度からこのランニングエコノミーについて調べられているということですね。今後もまた新たに発見されることがあるでしょう。

そうするとますます速く走れるひとが増えていくかもしれません。

楽しみにしていたいと思います!

以上、ランニングエコノミーについて、熊谷市のまつだ整形外科クリニック、理学療法士の法貴がお届けしました!

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