大腿部のランニング障害(ハムストリング)
2013年11月2日
こんにちは!
ランニング障害SOSサイト運営している市民ランナー整形外科医の松田です!
先日、フロリダ留学時代の恩師が来日して2年ぶりに飲みながら楽しい時間を過ごしました。
かれこれ8年の付き合いになります(^^ 近況を報告し合いました♪
さて、今回は<大腿部のランニング障害>について解説します!
大腿部ランニング障害の特徴
大腿部ランニング障害の代表的な疾患は<肉ばなれ>です。
特にハムストリングと大腿四頭筋がもっとも多く起こります。
また、坐骨結節周辺の痛みも大切です。
●肉ばなれの意味とその分類
肉ばなれとは、打撲などの直接的な外力とは違い、自らの筋力または介達外力によって筋が過剰に伸展されることにより発症します。
肉ばなれはその程度(重症度)によって3つに分類されます。
Ⅰ度(軽症):筋腱移行部における血管損傷
⇒その多くは微小血管の損傷による出血やその後の炎症により腫脹が起こるケースです。
ほとんどが痛みは軽度で可動域制限もわずかです。
Ⅱ度(中等症):筋腱移行部、特に腱膜の損傷
⇒筋力や可動域制限が明らかになってきます。特に歩行時の痛みが強くなってきます。
Ⅲ度(重症):腱性部(付着部)の断裂
⇒大きな負荷、ストレスが加わった結果、腱性部の断裂や付着部の裂離損傷となり歩行困難となるケースが多くみられます。
<豆知識>
ランニング中の肉ばなれで起こりやすい部位はどこでしょうか。
最も起こりやすいのはハムストリングで大腿二頭筋(長頭)や半膜様筋に好発します。
次に多いのが内転筋群(恥骨筋なども含む)や下腿三頭筋(特にヒラメ筋)そして、大腿四頭筋(大腿直筋)の順に多く見られます。
ハムストリング肉ばなれ
●診断
診断はエピソードから容易に判断できます。
確認するには、腹臥位になってもらい、膝を補助しながら屈曲していきます。
そうするとハムストリングの緊張をとることが出来るので、患者さんも楽に検査できます。
触診では、圧痛、腫脹や陥凹などを確認します。Ⅲ度の重症例では欠損部を触れることができます。
また腹臥位で膝の伸展がどれほど可能か確認することも大切です。重症例は完全進展できません。
Ⅰ度からⅢ度までの分類はMRIが有用です。
●発生メカニズム
経験されたことがある方は良く思い出してください。
もっとも起きやすいのは走っているときですが、特に着地(接地)するときに起こります。
下腿が接地直前に前方へ振り出されてからブレーキをかける際に、ハムストリングが強く収縮されて発生するのです。
また、接地の瞬間に起こることもあります。
これは、接地の際に地面から受ける反床力と、上半身が前方に進む推進力によって、股関節が他動的に屈曲されるために、ハムストリングが収縮するためです。
いずれにしても接地前後は要注意です。
●肉ばなれの要因
一般的に肉ばなれの要因としては以下のものが挙げられます。
・筋肉の疲労
・筋損傷(すでに損傷している状態)
・ストレッチ不足
・柔軟性の低下
・筋力のアンバランス(大腿四頭筋とハムストリング)
・体幹の不安定
・不安定なランニングフォーム
●治療方法
Ⅰ度:早期のストレッチ開始が可能で、予後良好です。
多くは数日から数週で完全復帰可能です。
Ⅱ度:筋腱移行部の損傷があるために、
アイシングなどの応急処置を行います。
定期的に筋腱移行部の修復状況をMRIで確認します。
一般的には競技復帰まで数週から数か月要します。
Ⅲ度:腱性部の断裂があり、保存的治療では数か月以上要します。
また、筋肉の違和感、ひきつれ感なども残存することもあり、早期修復術の適応になることがあります。
競技復帰のポイント!
復帰するにあたり、大切なポイントがあります。
1) 痛み
患部の圧痛がないか、またストレッチした際に痛みが出ないかを
確認します。
2) 柔軟性
ハムストリングの柔軟性が健側と比較して回復していること。
3) 筋力
筋力の左右差がない、もしくは90%以上は回復していること。
そして再発予防のために、接地動作で安定させるために体幹を強化することが必要です。
ハムストリング肉ばなれのまとめ
✔RUN中の接地前後に起こりやすい
✔Ⅰ度であれは早期に復帰可能だが、Ⅱ度以上は数か月
かかることがあり注意が必要
✔競技復帰には痛み、柔軟性、筋力を確認して、
再発予防訓練を行うことが大切