大腿部のランニング障害(大腿四頭筋肉ばなれ)
2013年11月2日
こんにちは!
ランニング障害SOSサイト運営している市民ランナー整形外科医の松田です!
現在故障中の私は「走りながら治す」を実践中です。
今朝は娘と30分ゆったり、のんびりジョグをしてきました♪
さて、今回は<大腿部ランニング障害>の続きで「大腿四頭筋肉ばなれ」と「坐骨結節周辺部の痛み」について解説します!
大腿四頭筋肉ばなれ
大腿四頭筋のなかで、特に肉ばなれが起きるのが「大腿直筋」です。
ランニングによる大腿直筋の肉ばなれは、大腿二頭筋長頭や半膜様筋と比較して頻度は少ないですが、成長期や女性ランナーに多いのが特徴です。
●診断
ハムストリング同様に、腹臥位における膝の屈曲をみます。膝を屈曲することにより大腿四頭筋のタイトネスをチェックできます。
軽度損傷の場合は、膝は90度以上屈曲可能ですが、中等度では90度以下、重症例では45度も屈曲できなくなります。
また中等度以上のケースでは痛みのために股関節を屈曲する姿勢がみられます。
●発生メカニズム
大腿直筋がもっとも伸展される際に発生します。
この肢位はRUN中にハムストリングの筋収縮によって後方に蹴りだした脚を前方に振り上げる姿勢です。
この時に大腿直筋は強く伸展されます。
●治療方法
基本的にはハムストリングと同様です。
Ⅰ度は1,2週、Ⅱ度で数週から1,2か月でスポーツ復帰が可能です。
Ⅲ度の損傷はランニングではまず生じないでしょう。
坐骨結節周辺部痛
この部位での痛みは鑑別診断を必要とするケースも少なくありません。
神経の絞扼性障害である梨状筋症候群やハムストリング症候群などがあります。
ランニングによる痛みの原因としては、ハムストリング付着部の炎症が良く見られます。
多くは繰り返される動作によって付着部にストレスがかかり、微小な損傷が起こるためです。
●症状
患部の圧痛がみられます。
また、ハムストリングに緊張を与える姿勢(膝を伸展させて拳上:SLRテスト)すると、内転すると痛みが誘発されます。
●発生メカニズム
ランニング中における振り上げ動作や接地動作で、ハムストリングの近位付着部が坐骨結節と擦れ合って生じると考えられています。
*肉ばなれが瞬間的は収縮による急性損傷であるのに対して、このような腱付着部の炎症は、繰り返される微小な損傷と考えられます。
●治療方針
患部の安静や抗炎症処置を中心とした保存療法が中心となります。
むしろ再発予防のために、体幹・股関節周囲の安定や柔軟性を獲得することが大切です。
●鑑別診断
いずれも類似症状を呈するので注意が必です。
・梨状筋症候群:梨状筋の出口で坐骨神経が絞扼される。
・ハムストリング症候群:半膜様筋と大腿二頭筋長頭の間の
繊維性索状物で、坐骨神経が圧迫される。
・腰椎椎間板ヘルニア:椎間板の髄核が神経根を圧迫。
大腿部肉ばなれと坐骨結節周辺部痛のまとめ
✔ランニング中、後方に蹴りだした脚を前方に振り上げる姿勢で発生
✔重症例は少なく、比較的早期に復帰可能
✔体幹・股関節のストレッチで予防が大切
—-あとがき—-
ついつい焦って不十分な状態で復帰してしまうランナーがいます。
痛みがなくなっても、復帰後はサポーターなどで保護しながら、
ゆっくり焦らず行いましょう。
再発が多いのは復帰するタイミングが早いか、
もしくは復帰後のケアが不十分の事がほとんどです。